仕事で訪れた別府の夜。
お客様のご厚意で、とっておきのバーに連れて行っていただきました。
お店の名前はTANNEL（タンネル）。
大分の方言で「訪ねる」という意味だそうです。
ここを訪ねる人に、特別な夜を届けたい。そんな想いが込められていると聞いて、ぐっと心を掴まれました。
入口は控えめで、いわゆる“知る人ぞ知る”という雰囲気。看板はあるけれど目立たず、扉の先に何があるのか少し緊張しながら足を踏み入れます。
中に入ると、音楽好きにはたまらない空間。
カウンターを中心に据えた落ち着いた店内には、身長ほどもある大きなスピーカーが2つ。棚にはずらりとLPレコードが並び、今や珍しいレコードプレイヤーが静かに回っていました。
マスターは音楽やフェスに深い造詣を持ち、ご自身でも音楽を楽しまれているそう。話の端々から“本物の音好き”であることが伝わってきます。
いただいたのは、その日のおすすめ「巨峰のオリジナルカクテル」。
巨峰のフレッシュな甘みと酸味が絶妙にバランスされた一杯で、グラスを口に運ぶたび、別府の夜がほんのり紫に染まるような気分になります。
おつまみには、ドライフルーツとチョコレートがさりげなく添えられて。
派手な料理はないけれど、音楽とお酒の余韻を楽しむにはちょうどいい。
連れて来てくださった方とマスターは旧知の仲で、共通の友人の話で盛り上がる会話を横目に、私はただその空間に身を委ねていました。音楽、空気、会話、すべてが心地よい。
1時間ほどの滞在で、お会計はカクテル・おつまみ・チャージ込みで2,000円ほど。
この内容、この空間でこの価格は驚きです。
TANNEL。
この名前をそっと胸にしまっておきたい。
次は、大切な誰かを“訪ねる”気持ちで、連れて来ようと思います。
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